普茶料理の御案内

 ある日のこと、一人の修行僧が当時禅僧として天下に鳴り響いていた趙州和尚を訪ねてまいりました。まだ初心であったのでしょう。「私は、この度、お寺に入って禅の修行をしたいのですが、禅の修行は何から始めたものでしょうか。見当がつきませんので、どうぞ御指導下さいますように」と、申し上げると、和尚は「ああそうか、それにしてもあなたは食事をすまされたか」と、言われますので、その僧は「食事はもう終わりました」と、素直に答えられますと、和尚は「食事が終わったら、飯茶碗を洗っておけ」と、申されました。その僧は、深く感ずるところがあったと「無門関」の第七則に書かれています。

 このように食事は、日常生活の基本でありますので、禅宗では常日頃から、食事について深く考え大切にしております。台所を掌る典座は、寺の中でも高い役位に挙げられ、隠徳を積む禅僧がこれに就くことが、古来慣しになっております。普茶は、もともと禅寺で茶礼といって行事や作務(仕事)を行う前後に出されていた茶礼からとも、お斎の後の御馳走をむだにしないようにとの配慮からうまれたとも言われておりますが、いずれにしましても、禅宗の精神と料理とが醸し出す、黄檗独特の精進料理であります。
 
 普茶は、黄檗隠元禅師が初めて我が国にもたらされてから、高野山や臨済宗の精進料理とは一種変わった植物性油をふんだんに使った中国の料理として、江戸時代から喜ばれ、普茶といえば黄檗、黄檗といえば普茶、といわれるほど切っても切りはなせないほど有名になりました。質素な禅堂生活も、時折り振る舞われる普茶によって、栄養も充分に補給され、どれほど大衆の体力を高めたか、想像以上でしょう。禅僧が長寿なのも、精進料理を続けてゆくことによってコレステロールの過重を防ぎ、いつまでも青年のように若々しい皮膚を保たせたことにあると言われております。

 ここで作ります普茶は、隠元禅師が中国から直接伝えられた方法によって料理いたしておりますので、何卒ご賞味下さい。
  
月例坐禅会

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