私とパソコン通信

私とパソコン通信
(峠の茶屋)
 1980年代後半から1990年代後半に掛けて流行った「パソコン通信」というものについて、今の若い人たちに説明するのは、とても大変なのですが、少々、お付き合い下さい(^_^)。

 インターネットがない時代、人々は出版物や新聞、テレビ、ラジオなどにホットな情報を求めていました。大量配信のメディアです。日本では、1980年頃にパーソナルコンピュータ(パソコン)と呼ばれる製品が登場し始めます。

   1979年 NEC PC-8001 ( 8bit CPU)発売
1981年 NEC PC-8801 ( 8bit CPU)発売
1982年 NEC PC-9801 (16bit CPU)発売

 当時は単独で利用されるのみで、外部と通信をする事は殆どありませんでした。大学や研究機関などでは、電話機の受話器に音響カプラ(デジタルデータを音に変換して電話回線で通信する装置)を取り付けて遠隔地のパソコンやサーバとデータ通信を行う程度でした。


(イメージ画像です)

 この頃、日本では電話回線に勝手に機器を取り付けることができない時代でした。いわゆる黒電話や灰色プッシュホンの時代です。苦肉の策として音響カプラが利用されていたのです。

 1985年、「通信の自由化」で大幅な法改正が行われ、日本電信電話公社の民営化と新規事業者の参入や電話機の自由化が行われました。電話端子がモジュラーコネクタ化され、技術認定を受けた製品であれば自由に取り付ける事が出来るようになり、本格的なデータ通信の時代が幕を開けます。

 待ってましたとばかり、大手のパソコン通信サービスが次々と開局します。
アスキーネット(1985年)、PC-VAN(1986年)、Nifty-Serve(1987年)、日経MIX(1987年)、等など。最初の頃の通信速度は、300bps や 1200bps 。画面にテキスト文字がタイプライターのように表示され、文章が読める程度のスピードでした。

1992年頃のパソコン通信「PC-VAN」のメインメニュー

 パソコン通信では、リアルタイムで株式市況やニュースなどを見ることが出来ましたが、もっとも盛況を博したのは、SIG(特定の興味がある事柄に対して同好の仲間が集まって情報交換する場所)でした。通信サービスによっては「フォーラム」とも呼ばれました。
Special Interest Group

 これまで社会では、特定の興味のある事柄に対して情報交換を行うには、何かのクラブや同好会のようなものに参加しなければなりませんでした。それがパソコン通信のSIGというものの存在により、あらゆる趣味・趣向など好きなモノ同士が情報交換できる場が生まれたのです。

 現代のインターネットと決定的に異なる事があります。それはテキストを中心とした文字によるコミュニケーションであったこと。また、大手のパソコン通信サービスが原則として有料の会員制であったこと。そして何よりも、電話代が従量課金であったことなどです。

 全ての会員がIDを持ち、そのIDとハンドルネームが自分の署名になっていた事だと思います。掲示板などにメッセージを書き込めば必ずIDが付記されます。発言は責任を伴うこと、それゆえ誰もが真摯に向き合う。それは、より身近で内容の濃いコミュニケーションをもたらしました。


私とパソコン通信の軌跡(SIGOP 峠の茶屋)
1988年2月 当時、大学院生(農学研究科)/「パソコン通信」を始めるきっかけは、高校時代の友人の勧めで通信機能付きのパーソナルワープロと通信モデムを購入したこと。日本最大級のパソコン通信サービスである PC-VAN と Nifty-Serve に入会。
(Fujitsu OASYS-Lite FROM10 + EPSON SR-120S) 画面40字×10行, 1200/300bps
1988年3月 PC-VAN SIG「動物ランド」に於いて電子掲示板「VAN自然の森」が開設されボードリーダーとなる
「自然とのふれあい」をテーマとするSIGの設立についてPC-VAN事務局と交渉。
当時、PC-VAN には自然系SIG(自然観察、山登り、バードウォッチングなど)はなく、「自然とのふれあい」について同好の士との情報交換の場(コミュニティ)を確保したいという信念のもとに交渉。
1988年7月 MS-DOS3.3 (PC98版) 発売
1988年8月 PC-VAN SIG 「大自然&動植物 (DAISIZEN) 」が誕生。SIG主宰者となり、シグオペ(SIGOP)としての活動を開始。
メンバーより画像投稿の要望があり、パーソナルワープロでは表示することが出来ないため、パソコンの購入に踏み切る。
(NEC PC-9801UX21 + 5インチFDD + CCT98)
1989年3月 第1回オフラインミーティング(長野県 奥蓼科温泉郷・渋の湯)
1989年4月 製薬会社(研究開発)に就職、引越/名古屋→相模原
月刊「パソコン通信」創刊号で人気SIGとして紹介される(記事抜粋PDF
1989年5月 SIG仲間の「ね子」さんと結婚(入籍)
1989年7月 霧ヶ峰高原オフ、関西鮒寿司オフ、焼岳オフなど
(オフに参加することで新しい出会いや趣味に挑戦する方が多く見られました)
丹沢バーベキューオフ、多摩川BW&芋煮会オフ等など
(以後、全国各地で思い思いにオフが行われるようになる)
北海道旅行中に本別オフ(タゴール邸)
1990年1月 月刊「パソコン通信」1990年1月号に掲載される(記事抜粋PDF
1992年7月 フォーラム(電子掲示板()のひとつ「山のフォーラム」が山を専門に扱う SIG「山★ザ・マウンテン」(通称:山SIG)として独立。(以後兄弟SIGとして交流)
1993年5月 Windows3.1 発売
1995年11月 Windows95 発売 (Internet Explorer 2.0) ブラウザが標準搭載され、インターネットの時代が到来。
1998年7月 Windows98 発売 (Interent Explorer 4.0)
2001年2月 活動母体となっていたパソコン通信サービス PC-VAN がサービスを終了しました。
これに伴い、SIGとしての活動の場は失われましたが、コミュニティの精神を維持するために有志が立ち上がり、ウェブサイトや各々の掲示板へと活動の場が移されました。
SIGで繋がった仲間は各方面で活躍され、すでに他界された方も増えてきましたが、オフがあれば懐かしいお顔を拝見するために足を運びます(^^)

月刊「パソコン通信」(エーアイ出版)
 他にも「ASAhIパソコン」「BE-PAL(ビーパル)」などの雑誌に
人気SIGとして紹介されましたが保管資料が残っていません。
(お持ちの方がいらっしゃれば是非ご連絡ください)



大自然絵巻(画像専用掲示板)

大自然絵巻(画像専用掲示板)

 この頃のパソコン通信は、テキストを主体とした掲示板が中心で、画像やプログラムは一旦、テキストに変換して掲示板にアップロードしていました。利用者は掲示板のテキストデータをダウンロードして、変換ソフト(ish)で画像ファイルに戻し、画像表示ソフトで表示します。

 当時は標準的な画像フォーマットがなく、市販のグラフィックソフトが出力する画像形式には互換性がなく、機種やソフトの壁を越えてやり取り出来る標準的な画像フォーマットが求められていました。そうした背景の中で登場したのがQLD画像(拡張子gra)でした。

 QLDは、SIG「QLD画像通信」を立ち上げた魔女さん(ハンドル名)作のフリーソフトで、8色表示ですが、パソコン通信の画像ファイルの標準フォーマットとして広く利用されました。

1989年3月12日(日)
奥蓼科温泉郷「渋の湯」(長野県)
第一回オフラインミーティング

←QLD画像
1989年3月12日(日)
奥蓼科温泉郷「渋の湯」(長野県)

 渋の湯(客室)のダイヤル式アナログ電話機に音響カプラを取り付けて、SIGの掲示板にアクセスしている様子です。

←QLD画像
1989年10月10日(火)
北海道旅行にてタゴール邸を訪問

前日は然別湖畔温泉に宿泊。その夜、お互いアマ無線家なので430MHzで一発交信成立(山越えの電波なのにスゴイ)。翌朝、タゴールさんが湖畔まで出向いて戴き無事アイボール成立。紅葉の糠平湖から松山千春邸、そしてタゴール邸にお邪魔しました。何が凄かったかって、そりゃタゴール邸のアンテナを含む無線設備ですね(^^)。二人が手に持っているのはビデオカメラです(大きいですね)。

←QLD画像
1989年10月22日(日)
丹沢バーベキューオフ(神奈川県ヤビツ峠)

←QLD画像
1989年12月3日(日)
BW&芋煮会オフ(東京・多摩川)

 当時、イメージスキャナのような高価な読み取り装置を保有する人は殆ど居ませんでした。

 そこで、SIGの有志の中には「必殺アップ請負人」などと称して、写真を郵送すれば代行してアップロードしてくれる強者が出現。もの凄い盛り上がりを見せました。

 自分のパソコンの画面にSIG仲間の写真が表示されること自体が、とても新鮮で驚きでもありました。

←QLD画像
1990年1月15日(月)
印旛沼バードウォッチング(千葉県)

 当時、皆がとても情熱的でした。何せ、各々が苦労して辿り着いた新天地のように感じていたのかもしれません。

 オフがあれば、何処であれ、万難を排してでも参加したいと感じました(笑)。

←QLD画像

これらの画像は、「SIG大自然&動植物」の電子掲示板「大自然絵巻」にアップロードされたQLD画像です。これらの画像ファイルを現代のPC環境に取り込むのには苦労しました。

Windows上でQLD画像が参照可能なツール(ビュアなど)を探しましたが、すでに入手できない状態になっていました。それならばと、我が家に動態保存しているPC98環境(PC-9801UX21やPC-9821As2など)で表示させたのですが、今度は画像を現代のPCやメディアに受け渡す方法がない。

彼是考えているうちに、10年近く前に、Windowsで動作するPC98のエミュレータ(T98-NEXT)を使って、Windows7上にPC98環境を再現させた事を思い出しました。古いPC(Windows7)から普段利用しているPC(Windows11)に、PC98エミュレータ環境をそのままコピーして起動したところ、PC98のMS-DOSが起動して、QLDやXLD画像を表示することができました。あとは、Windows11の Snipping Tool で現代の画像処理ソフトに受け渡しました。